【ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム】複合的メディア表現を考える|クロードクル

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2015年9月30日
【ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム】複合的メディア表現を考える

日本のマンガ・アニメ・ゲームは、子どもたちのための娯楽という枠を超えて、社会全体に影響を及ぼしています。それらの作品とその背後にあるテクノロジーや社会現象などと関連付けながら概観し、文化を支える複合的メディア表現の可能性を紹介します。

家庭教師が本業のライター
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企画展「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」は3分野に構成

六本木の国立新美術館にて、2015年6月24日から8月31日まで、企画展「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」が開催されました。
この展示は、日本のマンガ・アニメ・ゲームという3分野を時系列的・横断的に俯瞰し、社会的背景と絡めながら解説するというものでした。
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「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」の背景

1989年、「マンガの神様」と評された手塚治虫が亡くなりました。
この歴史的大事件の後、日本のマンガは変化したのでしょうか?
この問いに対して、展覧会開催をサポートしたマンが評論家・中野晴行さんは、「マクロで見た場合の答えは『NO』だ」と述べています(『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989』P8)。

マクロでの影響はないものの、手塚治虫が築き遺していったものは、継承や変容を通して、ミクロとしての変化はたくさん生じました。
それはマンガだけでなく、アニメやゲームにも影響を及ぼしています。
そして、不可解な事件の勃発、震災や大不況による危機、テクノロジーの急速な発展に伴うネット社会の成立・・・。そんな現代日本を取り巻く社会現象ともリンクしながら、マンガ・アニメ・ゲームの3分野は、手塚の生前とは異なる様相を呈しています

1989年から25年間に着目する本展覧会は、いくつもの作品を無秩序に陳列するのではなく、それらの作品の変遷や社会との関わりをもとに8つのテーマに別けています。

第1章 現代のヒーロー&ヒロイン
第2章 テクノロジーが描く「リアリティー」―作品世界と視覚表現
第3章 ネット社会が生み出したもの
第4章 出会う、集まる―「場」としてのゲーム
第5章 キャラクターが生きる=「世界」
第6章 交差する「日常」と「非日常」
第7章 現実とのリンク
第8章 作り手の「手業」

娯楽として消費されがちな作品の歴史を辿り、その社会的背景を読み解くことで、私たちは文化を支える複合的メディア表現としてマンガ・アニメ・ゲームを捉え直すことになるのです。

「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展示構成

現代のヒーロー&ヒロイン

第1章では、現代のマンガ・アニメ・ゲームにおけるヒーローやヒロインの姿を紹介しています。
90年代以降のヒーローやヒロインは、完全無欠な存在ではなく、人間的な弱さを抱えた存在として描かれます
0年代以降、その傾向が特に顕著です。

『鋼の錬金術師』では、錬金術師の兄弟が、失ってしまったものを取り戻すために旅に出ます。
『名探偵コナン』では、謎の組織に体を小さくされた探偵が小学生の姿で奮闘します。
『七つの大罪』の主人公は、「伝説の大罪人」という設定です。

人気マンガ・アニメの主人公たちは、自らの弱さに翻弄され、苦悩し、時にピンチに陥ります。葛藤する彼らの姿は共感を呼び、多くの読者に支持されてきました。

こうしたヒーロー・ヒロイン像の背後には、私たち日本人が直面した社会的事件の影響が横たわっています。
大災害の脅威、テロリストの恐怖、いじめやリストラなどのトラブル・・・。日常を揺るがす出来事を前にして、私たちは自らの弱さを露呈してしまいます。私たちと同じ弱さを抱えつつその弱さを乗り越えていくヒーロー・ヒロイン像が現代日本では求められているのでしょう

一方、展覧会では言及されていませんでしたが、現代のヒーロー・ヒロイン像には、時代を超えて受け継がれる普遍性も見られます。

『七つの大罪』はアーサー王伝説を、『マギ』は千夜一夜物語をモチーフにしています。
『名探偵コナン』は推理ものの伝統を、『NARUTO‐ナルト‐』は少年忍者ものの伝統を継承しています。
また、海外のRPGの影響で作られた『ドラゴンクエスト』シリーズや寺山修司の世界観を取り入れた『少女革命ウテナ』など、過去の名作から刺激を受けて制作された作品も数多くありました。

過去から連なるヒーロー・ヒロイン像の系譜の中に、現代のヒーロー・ヒロインも位置づけられるのです。ここに人気作品誕生の根拠があると考えられます。

現実と非現実とをつなぐもの

現実の社会とマンガ・アニメ・ゲームとは、相互に影響を及ぼし合っています。その両者が、時にダイレクトに結びつくことがあります。

第6章で紹介されている『新世紀エヴァンゲリオン』は、広範な情報量や緻密な心理描写などで独自の世界観を築き、ネットでの話題拡散と相俟って大ブームを巻き起こしたアニメ作品です。
埼玉県を舞台としたアニメ『らき☆すた』は、作中に登場する高校や神社のモデルとなった実在の場所をファンが訪れる「聖地巡礼」の火付け役となりました。

これらの作品に共通するのは、非日常の出来事だけでなく、人間関係を中心とする日常も丁寧に描かれている点です。
見る者はすんなりと作品世界に入り込み、作中の登場人物たちと喜怒哀楽を共有できます。
そうして多くの支持者を得た作品は、現実世界でも社会現象をもたらすのです。

一方、現実世界の出来事が作品に取り込まれることもあります。特にマンガには、世相を反映した作品が多く見られます。

しりあがり寿の『あの日からのマンガ』は、東日本大震災の「あの日」以降を生きる人々の姿を描きました。
曽田正人『め組の大吾』は、消防官の生活と主人公の成長を描いた職業マンガです。
同じ職業マンガに属する作品に、武富健治『鈴木先生』があります。公立中学校の教師が、生徒達とともに、どこにでも起こり得る正解のない問題を考えていきます。

マンガは、歴史的大事件から日常のワンシーンまで、人々の関心事に鋭く切り込んでいきます
アニメやゲームは、テクノロジーの発達で高度な表現が可能になった一方で、それらの技術を1つの作品に集約し公開するまでに多くの時間を要します。
それに対して、人間の手が描くマンガは、社会の出来事を素早く発信するのに適したメディアであるといえます。

ネット社会の成立とコミュニケーションの変化

パソコンとインターネットの普及で誕生したネット社会では、従来と異なるコミュニケーションスタイルが確立しました
こうした社会背景との関係からマンガ・アニメ・ゲームを紹介するのが第3章と第4章です。

「カゲロウプロジェクト」の仕掛け人・じんは動画投稿サイトに楽曲を投稿、小説や漫画の発表を経た後、アニメ『メカクシティアクターズ』が誕生しました。
同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』は、アニメ・マンガ・ゲーム・CD・実写映画などへと展開しました。
同人ゲーム自体はコミックマーケットごとに何度もリリースされ、そのたびにエンディングを巡ってネット上で議論が沸き起こりました。

これらの作品からは、2つの大きな特徴が見えてきます。
1つめは、ネット上での口コミや議論が作品の展開に大きく影響するという点です。
ネット社会の到来によって、人と人とのコミュニケーションは容易になりました。その結果、ある作品に対する評価が急速に・広範囲に伝播するようになったのです。そうした評価に後押しされた作品は、大企業などの後援がなくとも、急成長を遂げていきます。

2つめは、マンガ・アニメ・ゲームなどの垣根を越えて作品が作られるメディアリミックス展開です。
従来の「原作マンガ→アニメ化→グッズ販売」という企業主導の流れとは異なり、各メディアが原作とは全く別の世界観を提示することがあります。
たとえば、『東方紅魔郷 ~ the Embodiment of Scarlet Devil.』は弾幕系シューティングゲームですが、このゲームから派生作品や二次創作が次々と生まれています。

ゲームの世界でも遊び方が大きく変化しました。
『ポケットモンスター』シリーズでは、ネットワーク接続によるポケモン交換で、世界中のプレーヤーが対戦や交換を楽しんでいます。
『モンスターハンター』シリーズは、多人数で共同して狩りを楽しむ「狩りゲー」というジャンルを確立しました。これらのゲームは、自分一人で楽しむゲームではなく、コミュニケーションツールとしてのゲームです。

テクノロジーが生み出すリアリティー

日進月歩のテクノロジーは3DCGなどのデジタル映像技術を発達させ、架空の世界にリアリティーをもたらしました。
第2章では、そうした作品を紹介しています。

『機動警察パトレイバー』劇場版シリーズは、作業用ロボット「レイバー」があちこちで使用される近未来の東京が舞台。
監督の押井守らは、もう一つの東京をリアルに描きました。そこに込められているのは、コンピュータ・ウイルスの脅威や「戦争状態の東京」など、現実世界を先取りしたテーマでした。

同じく押井守監督によるSFアニメ『イノセンス』は、人間の生きる意味を問う哲学的なストーリーです。
また、細田守監督による劇場用アニメ映画『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』では、実在の企業を登場させるなどの演出によってネット社会の問題点を炙り出しました。

これらの作品に共通するのは、時に単なるエンターテイメントの枠を超え、現実世界に生きる私たちに対して問題提起をするということです。
リアリティーの背後には、私たちが目を逸らしがちな現実の諸問題が横たわっているのです。そういう視点で第5章を鑑賞すると、面白い発見があるのではないでしょうか。

『ときめきメモリアル』は、意中の女の子を振り向かせて恋人同士になることを目的とする恋愛シミュレーションゲームです。
『アイドルマスター』は、プロデューサーとしてアイドルを育成するゲームです。
壮大なスケールのアクションゲームには『戦国BASARA』があります。実在した有名な戦国武将を操り、史実とは異なる天下統一を目指します。

最近のゲームでは、進歩した技術に支えられて、架空のキャラクターたちが生き生きと動き回り、プレーヤーは複雑な人間関係すらシミュレートできるようになりました。
望ましいエンディングをゲームの世界で自ら実現していく過程で、プレーヤーは、ゲームとは異なる現実を意識するのでしょう
その結果として、現実に果敢に立ち向かうか、現実から目を逸らすか、どちらを選ぶかはプレーヤー次第ですが・・・。

以上で見てきた高度な技術を支えるのは作り手の「手業」です。
第8章では、そうした「手業」を紹介します。

マンガ『GANTZ』に見られる3DCGを駆使した作画、ミサイル一斉発射の映像などで有名な板野一郎による「板野サーカス」、レースゲーム『グランツーリスモ6』のリアルなCGを作るために行われたコースやクルマの徹底取材・・・。
「手業」から生み出されるリアリティーが私たちを魅了してやまないのは、そこに作り手の情熱や息遣いがあるからなのでしょう

複合的メディア表現としての可能性を提示した意義

「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」は、巷に流通する作品を大々的に取捨選択し、その結果残ったものだけを企画展の趣旨に合わせて展示していました。
そのため、日本のマンガ・アニメ・ゲームを語り尽くす展覧会にはなっていませんでした。

しかし、大量生産・大量消費されがちなマンガ・アニメ・ゲームに秩序を見出し、これらの複合的メディア表現としての可能性を提示した意義は大きかったと考えられます。
多くの人たちにとって、マンガ・アニメ・ゲームと社会との関係を考えるきっかけとなったのではないでしょうか。
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ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム
http://www.nact.jp/exhibition_special/2015/magj/
●会期:2015年6月24日(水)~8月31日(月)
●会場:国立新美術館
106-8558 東京都港区六本木7-22-2
http://www.nact.jp/
●開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
金曜日は20:00まで
●休館日:毎週火曜日
●アクセス:
東京メトロ千代田線乃木坂駅
都営大江戸線六本木駅
東京メトロ日比谷線六本木駅

著者:みみずく

家庭教師が本業のライター
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平日の夜は、家庭教師として小学生から高校生まで幅広く指導しています。国語・数学・英語などの主要科目だけでなく、面接・作文・小論文なども教えます。各科目の勉強法や指導テクニック、受験に関するあれこれなど、教育に関する情報を家庭教師ブログに掲載しています。「両国 家庭教師」で検索してみてください。
土日は、様々なイベントに参加するため、都内を中心に首都圏を動き回っています。アートやサブカル、妖怪、アングラ、フェチなど、偏った興味関心の赴くまま、好きなものを追い求めることに一生懸命です。名刺をばらまいたり、一眼レフで写真を撮りまくったりしているうちに、いつの間にかお友達が沢山できていました。イベントに関する情報も裏ブログ(下記サイトURL)やSNSで発信中です。
「好きな人や好きなものを応援したい!」という思いを大切に家庭教師&ライターとして奮闘中です。