【マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展】≪印象、日の出≫から≪睡蓮≫まで|クロードクル

  • 未経験OKのフリーライター求人
1,681 views
2015年11月6日
【マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展】≪印象、日の出≫から≪睡蓮≫まで

《印象、日の出》の展示は終わったけれど、モネを堪能したくて東京都美術館の「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」へ。どこを切っても“これぞモネ”。モネ作品の神髄をお伝えします。

美術ライター
  
①

良き家庭人、モネ

美術書などでよく目にするモネの姿といえばひげをたくわえ、帽子をかぶった好々爺の雰囲気。明るい色彩の絵とあいまって、モネは温かな家庭をイメージさせる。
この展覧会はそんな良き家庭人モネの「家族の肖像」から始まる。
子供たちの肖像画、ノルマンディーの避暑地で過ごした際のスナップショットのような作品。継娘のオシュデが描いた父モネのタッチによく似た作品。幸せな家族の断片が並び、妻や子供たちへの惜しみない愛情を感じずにはいられない。

旅好きのモネ

モネは後半生を過ごすジヴェルニーに移り住む前、よく旅をしていたという。
ロンドン、オランダ、そしてフランス国内をあちこちと。
夕暮れの光が反射する雪景色を描いた《雪の効果、日没》を見ているとひんやりとした空気まで伝わってくるようだ。
チューリップ畑の絵では、花はラフなタッチのみで捉えられ、形ははっきり描かれていない。しかし確かにそこには赤いチューリップが揺れている。これも実にモネらしい。

「私が画家になれたのはブーダンのおかげ」

3つ目の展示コーナーにあったのはこれまでのモネ展ではあまり目にすることがなかったモネ自身の絵画コレクション。
ドラクロワ、ヨンキント、ピサロ、シニャックなど。
私が惹かれたのはウジェーヌ・ブーダンだ。
ブーダンはモネに風景画を描くように勧めた画家だそう。つまりモネの最初の師匠ともいうべき人で、彼の広々とした空と海岸の絵は印象深い。
ぐっとブーダンに興味をひかれた私はモネ展のスピンオフ企画等で「ブーダン展」をやってくれたらと思ってしまう。

サン=ラザール駅

②10_クロード・モネ《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》 ※東京 2015/10/20-12/13 クロード・モネ《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》 1877年

10/20から展示されている《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》。印象派好きにはお馴染の駅である。カイユボットもマネも、モネも何度も描いている。
この絵は写真でみるより、実物はずっとみずみずしい。
モネはもくもくとしたこの蒸気を描くために大量の石炭を汽車に詰め込ませ、汽車を止め、ホームの人を立ち退かせたのだとか。
モネの徹底ぶりというべきか、執着がどこか滑稽にも思えてくるのは私だけだろうか・・・。

制作されたのは印象派展第3回目の1877年。当時の画家たちは近代化の波が押し寄せたパリの風景を良く描いたけれど、モネはいわゆる“都会の孤独”みたいな感情にはあまり関心はなかったのだろう。
風景は単にモティーフでしかなく、絵にストーリー性がないのがモネらしさなのだと改めて実感する。

睡蓮の部屋

③17_クロード・モネ《睡蓮》(1917-19) クロード・モネ《睡蓮》1917-19年

多くの人がやっぱり期待するのが、睡蓮の絵。
展覧会でも大きな睡蓮の作品が壁にずらりと並び、“睡蓮の部屋“風になっている。
モネが自慢の水の庭を造り始めたのは1893年。それから生涯で200点を超える睡蓮の絵を描いた。
この絵はサイズも大きく、絵具が踊っているようで実にダイナミック。
驚いたのはこの絵を描いた時、画家がすでに70代後半だったことだ。
このような睡蓮の作品は20世紀なかば、ジャクソン・ポロックらの作品が人気になってから再評価されるようになったという。抽象絵画以前、モネはずいぶんと前衛的だったのだ。

「何も見えなくなる前にすべてを描きつくしてしまいたいのです」 モネの手紙

④18_クロード・モネ《バラ色の小道、ジヴェルニー》 クロード・モネ《バラの小道、ジヴェルニー》1920-22年
⑤03-b_クロード・モネの眼鏡
⑥03-c_クロード・モネのパレット クロード・モネの眼鏡/クロード・モネのパレット

晩年のモネが白内障だったことはよく知られている。
目がよく見えなくなったせいでこのバラのアーチの絵のように、モヤモヤとした表現が多くなった・・・とうのが定説だった。
だが、本展では「モネは近距離では十分な視力があったとされ、自身の筆運びは十分に認識できていたと考えられている」と紹介されていた。

だとしても、画家が3回の手術を受け、失明の恐怖と闘っていたことは事実。
だから「何も見えなくなる前にすべてを描きつくしてしまいたいのです」というモネの言葉はやはり心を打つ。
本展ではじめて見たモネのメガネは手術後、青が強く見えてしまうようになったため、それを補正するための黄色みがかったレンズがはめられ、左右の凹凸も異なっていた。モネが生きていた証を強く感じる展示品だった。

展覧会を見終えて、なぜ日本人はモネがこんなに好きなのだろうと、ふと思った。
その答えは風景が刻々と変わり、絵がうまく描けないときのモネのぼやき-「自然に従うしかない」-にあるのではないか。
あるがままに自然によりそい、自然とともに生きていく。そんなモネの姿勢が日本人には腑に落ちるのだろう。
だから飽きない、いつまでも見ていたい。そんなモネの魅力を存分に味わえた。
またモネの展覧会かと思うことなかれ、深くて新しい発見がきっとあるはず。
Musée Marmottan Monet, Paris (c) Bridgeman-Giraudon

マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展
http://www.ntv.co.jp/monet/
●会期:2015年9月19日(土) ~ 12月13日(日)
●会場:東京都美術館
110-0007 東京都台東区上野公園8-36
http://www.tobikan.jp/
●開館時間:9:30~17:30 (入室は閉室の30分前まで)
金曜日は9:30~20:00 (入室は閉室の30分前まで)
●休館日:月曜日、11月24日(火)※ 11月23日(月・祝)は開室
●入場料:一般 1,600円 学生 1,300円 高校生 800円 65歳以上 1,000円

著者:河津寿美子

美術ライター
アイコン
アートはムズカシイもの→ちょっとオモシロイものと思ってもらえるよう紹介していきたいです!西洋美術をはじめ、仏教美術や浮世絵などの日本美術も得意ジャンルです。