【おとなもこどもも考える ここはだれの場所?】社会問題を考える|クロードクル

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2015年9月30日
【おとなもこどもも考える ここはだれの場所?】社会問題を考える

「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」は、場所への問いかけをきっかけにして地球環境や教育、自由などの社会問題へとアクセスできる展覧会です。こどもの知性に訴えかける現代アート作品の数々を紹介します。

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場所への問いかけから始まる社会問題へのアクセス

2015年7月18日から10月12日まで、東京都現代美術館において、企画展「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」が開催されています。

毎年こどもたちの夏休み期間中、東京都現代美術館では、こどものための企画展を開催してきました。そうした展覧会はこれまで未就学児対象でした。こどもの知性に訴えかけるという趣旨があったからです。

一方、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」は、こどもの知性に訴えかける展覧会となっていました。メインターゲットは、お母さんと一緒に美術館に来るのを嫌がり始める年頃の小中学生や高校生です。彼らは、自我が芽生えておとなたちと距離を置き始める過程で、時に社会への不満や思いを募らせます。そうした不満を表に出す方法のひとつとして美術の力が有効であることに気づいてほしいという趣旨です。

「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」では、4組の作家たちが、それぞれ「ここではない」場所への入り口を作りました。それらを目の当たりにしたこどもやおとなは、場所への問いかけをきっかけにして、地球環境や教育、自由などの社会問題へとアクセスしていきます。現代アートの思考ツールとしての可能性をも示唆するユニークな展覧会でした。

「ここではない」場所への4つの入り口案内

―地球はだれのもの?―ヨーガン レールが遺した地球環境問題への入り口

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ヨーガン レール《ヨーガン レールが集めたかけら》2011-2014年
2014年に死去したヨーガン レールさんはファッションデザイナーとして有名ですが、最後の2年間はアクティビスト(行動主義者)を自認していました。移住先の石垣島にて、ヨーガンさんは、漂着するゴミで海岸が汚れていくことに心を痛めました。そうした環境破壊の現状を訴えるため、「自然との共存」というメッセージをこめた作品を積極的に制作したのです。
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ヨーガン レール《ヨーガン レールの最後の仕事》2011-2014年
1つめの部屋と2つめの部屋は、カラフルで美しい造形物に彩られていました。こどもたちは、これらの作品を目にした瞬間、「これは何だろう?」と興味を示すはずです。こどもたちが喜びそうな作品の数々は、ヨーガンさんが海岸で拾ったゴミから作られたものです。

2つめの部屋にはヨーガンさんの最後の仕事が展示されていました。ゴミから再び役に立つものを作るという意図で制作されたランプの数々は、こどもたちが喜びそうな、美しく幻想的な空間を演出していました。
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2つの部屋で楽しんだこどもたちは、3つめの部屋で、自分たちが感動した作品が何に由来するのかを知ります。生前のヨーガンさんは「自分の作ったランプは、人を惹きつける入り口」と述べました。今回の展示でも、綺麗なランプが、こどもたちを真実へと誘導する仕掛けとなっていました。

この部屋には、美しい浜辺の風景写真とそこに漂着したゴミの写真とが並置され、レーガンさんが最後に遺した「文明の終わり」という文章なども展示されていました。これらの作品からは、地球環境問題に対するレーガンさんの思いが読み取れます。

自然に還元されなかったプラスチック片を魚が食べ、その魚を人間が食べる・・・人体にも影響を及ぼす食物連鎖の問題は、決して他人ごとでは済まされない深刻なものです。そうした現実に気づかせるきっかけとなる展示でした。

―美術館はだれのもの?―おかざき乾じろが演出する「こどもにしか入ることのできない美術館」

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はじまるよ びじゅつかん(おかざき乾じろ 策)
展示を内覧していた私は、この不思議な入り口から中へ入ろうとしました。しかし、傍で作業をしていた造形作家・おかざき乾じろさんに止められました。「ここはこどもしか入れないんですよ」

「こどもにしか入ることのできない美術館」は、本当に小中学生しか入ることが許されない空間です。こどもが中で楽しんでいる間、おとなは壁の文章を読んでいることになります。その文章には、おとながおとなであることを恥ずかしく思うようなことが書かれています。
6 ユニークな空間を作ったおかざきさんは語りました。「こどもがこどもである理由はおとなになっていないことです。そして、『こどもとは何か?』を考えることは、『美術とは何か?』にもつながっているんです

おとなは、本などを読んで美術を「知っている」つもりになります。しかし、実際には、おとなよりもこどもの方が美術を知っているというのがおかざきさんの主張です。「美術は本来、一人で感じることから始まります。こどもは、言葉を知らず社会に合わせられないから、純粋に美術を感じるんです。」

こどもたちだけが入れる空間には、「カンシイン=ウォッチマン」と呼ばれる唯一のおとながいます。ウォッチマンは、作品に対して自分が感じていることを勝手に話し始めます。それを聞いたこどもたちは発言を促されるという仕掛けです。
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おとなは、バリケードの外から辛うじて見える作品を眺めながら、「こどもは何を見ているのだろう?」と待ち続けます。一方、こどもは、展示を見たりウォッチマンと交流したりして美術を存分に堪能します。「こどもにリピーターになってほしいですね」と語るおかざきさんの笑顔が印象的でした。

―社会はだれのもの?―会田家の批評精神が構成する「それとはちがう場所」

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会田家(会田誠、岡田裕子、会田寅次郎)展示風景
アーティストである会田誠・岡田裕子とその息子の会田寅次郎の3人からなる会田家は、学校や社会などに対する批評精神をアート作品へと昇華させ、「それとはちがう場所」を作り上げました

展示室真ん中にある「檄」は、会田家3人で制作した共同作品です。日本の現状に対する不満を3人がバラバラに出し合い、それらをミックスして墨で書き上げました。一見すると政治的な作品ですが、そこに込められているのはあくまでもユーモアです
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岡田裕子×酒井貴史・水本博之《カラダアヤトリ〜プロローグ〜》2015年 ほか

展示作品全体では、会田誠さんの作品が少なめでした。そのことについて、「我が家において、僕の存在感がどれだけ薄いかが分かりますね」と会田誠さんは苦笑していました。会期中の8月まで、会田誠さんは会場に滞在して木版画を掘り続けました。

岡田裕子さんは、会田家での展示について「現代美術館でまたできるのは嬉しいです。一方で、面倒くさい部分もあります。会田家での出展は家庭と同じでトラブルなどもありますから」と語りました。今回岡田裕子さんが展示していたのは、子育ての中で作ってきた作品や教育・学生に関わる作品でした。

「日本では珍しいデジタルネイティブで、軽く変わっています」と会田誠さんに紹介された会田寅次郎さんは、中学2年生でありながらパソコンなどの機器を使いこなして作品を制作します。今回は、会田寅次郎さんが構想・製作総指揮した映像作品『TANTATATAN』(タンタタタン)が上映されました。

3人でいろいろ出してカオスにしよう」と語る会田誠さん。会田家の演出する混沌空間は、こどもにもおとなにも思考を促す、社会への入り口となっていました。
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オルタナティブ人形劇団「劇団★死期」《劇団★死期シアター〜「ゲンダイチコースケの殺人ミュージアム」を中心に〜》2015年

―私の場所はだれのもの?―アルフレド&イザベル・アキリザンによる “engagement” の形

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アルフレド&イザベル・アキリザン《住む:プロジェクト―もう一つの国》2015年
フィリピン出身でオーストラリアに住むアーティスト・アルフレド&イザベル・アキリザンのお二人は、 “engagement” (関わり)や「場」をテーマにした作品を展示しました。

展示室にある無数の小さな家は、地元の小学校で開催されたワークショップで全校生徒が手作りしたものです。「自分たちの家とは何だろう?」「自分たちの住みたい家とは何だろう?」という問いかけに対して、こどもたちは自分の考える「家」を形にしました。

生徒たちとの対話も作品を設置する空間との関わりも“engagement” のプロセスです」と語るアルフレドさん。ここで大切になってくるのは、作品がどう見えるかではなく、どう関係を築いていくかです。ワークショップに参加したこどもたちは、家について考える過程で、場との関わりについて考えるきっかけを得たのです。
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展示室には、来場者が座って家を作るための作業スペースもありました。そこで作成された作品は展示に加えられて、展示自体が常に変化していきます。作ることを通して家について考えることは、「こどもだけでなく誰にとっても大切なことです」とイザベラさんは語りました。

「ここはだれの場所?」をこどももおとなも考える展覧会

4組の作家たちが演出する「場所」は、アートとして楽しいだけでなく、現代社会に潜む諸問題を浮き彫りにしていました。そこに迷い込んだ人たちは、こどももおとなも自ら考え始めます。

おとなでも答えるのが容易ではない「ここはだれの場所?」という問い。こどもにとっては、もしかしたら難解過ぎるのかもしれません。しかし、「よく分からないけれど面白いもの」は、こどもの知性を刺激し、こどもの夢を広げてくれます。そうであれば、こどもだからこそ、「ここはだれの場所?」という問いに対して真摯に向き合えるのではないでしょうか?

一方、日常生活に忙殺されて思考停止に陥りがちなおとなは、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」を巡り、こどもの視点から社会のあり方や自分の立ち位置について考えてみるのも面白いはずです。こども時代に思い描いた夢と再会し、それをきっかけに世界の見え方が変わってくるかもしれません。

「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」は、世代を超えて思考を促すという意味で現代アートの新たな可能性を示唆する展覧会でもありました。

おとなもこどもも考える ここはだれの場所?
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/whoseplaceisithis.html
●会期:2015年7月18日(土)―10月12日(月・祝)
●会場:東京都現代美術館
135-0022 東京都江東区三好4-1-1
http://www.mot-art-museum.jp/
●開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
●休館日:毎週月曜日(2015年7月20日、9月21日、10月12日は開館)、7月21日、9月24日
●アクセス:
東京メトロ半蔵門線・清澄白河駅
都営地下鉄大江戸線・清澄白河駅
東京メトロ東西線・木場駅
都営地下鉄新宿線・菊川駅

著者:みみずく

家庭教師が本業のライター
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平日の夜は、家庭教師として小学生から高校生まで幅広く指導しています。国語・数学・英語などの主要科目だけでなく、面接・作文・小論文なども教えます。各科目の勉強法や指導テクニック、受験に関するあれこれなど、教育に関する情報を家庭教師ブログに掲載しています。「両国 家庭教師」で検索してみてください。
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「好きな人や好きなものを応援したい!」という思いを大切に家庭教師&ライターとして奮闘中です。