【ペインティングの現在-4人の平面作品から―】小江戸川越で芸術に触れる|クロードクル

  • 在宅ワークのライター募集
1,981 views
2015年11月19日
【ペインティングの現在-4人の平面作品から―】小江戸川越で芸術に触れる

「埼玉にゆかりのある」「平面作品」という共通項はあるが、ジャンルも作風も年代も異なる4名の作家。同じ現代を生きていても四者四様、作家が違えば1つのキャンバスが全く異なったものに変化します。現在の才能溢れる作家たちの作品を間近で体感しよう。

ライター
  
kabayama1

現在活躍中の4人の作家による個性あふれる作品が集結

本展示会で紹介する作家は、高橋大輔(1980年生まれ)、荻野僚介(1970年生まれ)、浅見貴子(1964年生まれ)、樺山祐和(1958年生まれ)の年代が違う4人。
共に、埼玉県西部地域の出身もしくは在住ということで、同地域に位置する川越市立美術館ならではの企画となっています。
過去にはもちろん、この会期中にも高橋、荻野、樺山はそれぞれ都内で個展を開催しており、今まさに最前線で精力的に活動している作家たちといえます。
今回、平面作品とはいえ、作風もジャンルも全く違う4人の近年から最新の作品までを見ることができます。
takahashi1

政治経済を学んだのち、画家へと転身を遂げた異色の作家荻野僚介

ogino1
ogino2
最初に展示されているのは、明治大学政治経済学部卒業後にアーティストに転身したという川越市出身の荻野僚介の作品。
筆の跡を残さない色面構成と、マスキングテープを使って色が混ざらないようにし、均一に塗られているのが特徴。
完璧な円や直線が描かれた作品たちに囲まれると、そこはピンと張り詰めた空間となり、緊張感が漂います。
凹凸のない全くの平面作品ですが、普通より少し低めに展示されている作品や、高さをずらして展示された2つの作品などがあります。
そのような作品の配置によるせいか、物体が浮き出ているような立体的な感じや、動きがあるような印象を受けます。

本企画展担当の濱田さんによると、今回の展示会の作品の配置は全て作家自身で決めているそうです。中でも展示に一番時間をかけて作品の展示位置を細かく調整していたのが荻野さんで、展示が終わったあとも一度決めた配置が気になり、別の日に再度会場を訪れ、作品数を増やしたり配置を変えたりしていたとのこと。
この空間を作るための荻野さんの緻密な計算や、作品との向き合い方が、ここにいるだけで感じられる、そんな展示空間でした。

物語の世界にいざなってくれる樺山祐和の森の世界

kabayama2
次に展示されていたのは、入間市在住の樺山祐和の作品。
武蔵野美術大学大学院修了で同大学教授として後進の指導にあたりながら制作も続けている樺山さんの作品は、学生時代から様々に変化を遂げ、ここ数年は森をモティーフにした作品を制作しています。
油彩でありながら、まるで日本画を思わせるような幽玄な雰囲気の漂う作品たち。2mをゆうに超える大きな作品を前にすると、実寸大の森に入り込んだ感覚になります。

本作を描くために墨で膨大な数の素描(スケッチ)を行っており、今回、その一部も展示しています。どれも流れるような墨の線は和を感じさせます。どの素描がどの作品の元となっているのか考えるのも面白いかもしれません。
化け物が出てきそうなおどろおどろしいウネリのある森、妖精と出会えそうな直線的な木々の中に光の漏れる森など、1つ1つ違う森ですが、マイナスイオンを浴びたような神聖な気持ちになります。

絵画?ペインティング?高橋大輔の型破りな作品

色合いがガラッと変わり、一気にポップな世界へ。小川町在住の高橋大輔は東京造形大学出身で本展の一番の若手作家です。
キャンバスからあふれ出る絵具、厚く重ねられた絵具、ペインティングナイフや刷毛を使って動きを出した絵具の姿は、色彩豊かで、楽しげで、美味しそうにも見え、見るものをウキウキさせてくれます。
勢いのある大胆な作品は近くで見ると幾層にも絵具が重なっているため、重さがあり、大胆なだけでなく実は繊細に作られていることがわかります。
takahashi2

基本的には、具体的な何かをモティーフに描いているわけではなく、塗りながら作品からインスピレーションをもらって正解を探っていくという手法。
「受け身なんです。最終的に自分の目指すレベルに持っていくということは考えていますが、最初にタイトルは決めず、出来上がったあとに浮かぶことも多いです。」と高橋さん。
そうして出来上がった作品には、答えがわからないほうが面白いからと「無題(マデ)」、「無題(tmtm)」という暗号のようなタイトルがつけられています。見るほうも作品を素直に受け身に鑑賞して楽しむのが正解のようです。

絵具の激しい凹凸やはみ出し方眺めていると、平面作品の枠を越えていて、絵画やペインティングの自由さ、可能性を考えさせられます。

墨を使って、和紙の裏から自然の美しさを描く浅見貴子

最後の展示は、多摩美術大学卒業で埼玉県秩父市在住の浅見貴子の樹木を描いた作品です。
彼女の作品の特徴はなんといっても和紙の“裏から描く”という手法。
また、迫力のある力強い黒点の滲みや墨の濃淡により、樹木の枝ぶりを表現し、作品に奥行きを出しています。

ふと、子どもの頃にトレーシングペーパー(写し紙)に顔の絵を描いて、裏から見たら、あまりに左右のバランスが崩れて驚いたことがあったのを思い出しましたが、裏から描くということは左右だけでなく、前後も反転するということ。
表からであれば遠くにあるものから描くところを、近くに見えるものから描かなくてはならないため、あとから手前のものを描き直すことや、描き加えることはできません。
asami1

このような手法のため、力強い枝ぶりや墨の滲んだ黒点などは、勢いに任せたものではなく、樹木を誠実に見つめ、デッサンをした上で出来上がります。
描かれているのは、近所の桜であったり自宅の庭木であったりと、特別なものではなく身近にある樹木なのですが、自然の造形がこれほどにドラマティックなるものかと感動させられました。

人気の川越散策をしながら、埼玉の歴史とともに芸術にも触れてみよう

本展は、今まさに活躍中の現代の作家4人で構成されます。
四者四様、作風は全く違いますが、地元の作家ということで、作家と直接会える機会も多く用意されています。
実際、著者も小学生向けのワークショップの講師として来館されたときに、高橋大輔さんとお会いすることもできました。
この機会に作家を知り、作品に出会い、現在の平面絵画がどうあるのかを体感してはいかがでしょうか。
川越市立美術館
川越市立美術館

【特別展】ペインティングの現在―4人の平面作品から―
●会期:2015年10月31日(土)~12月23日(水・祝)
●会場:川越市立美術館
350-0053 埼玉県川越市郭町2丁目30番地1
電話:049-228-8080
ファクス:049-228-7870
http://www.city.kawagoe.saitama.jp/artmuseum/index.html
●開館時間:9:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
●休館日:月曜日
●入場料:一般500円/大学生・高校生 250円/中学生以下、障害者手帳をお持ちの方は無料
●アクセス:
最寄り駅:JR埼京線(川越線)「川越駅」、東武東上線「川越駅」、西武新宿線「本川越」
【川越駅→美術館まで】
①西口2番のりばから、イーグルバス「小江戸巡回バス」で「博物館美術館前」下車
②東口3番のりばから、東武バス「小江戸名所めぐりバス」で「博物館」下車
【本川越駅→美術館まで】
①イーグルバス「小江戸巡回バス」で、「博物館美術館前」下車
〒350-0053 埼玉県川越市郭町2丁目30番地1
電話:049-228-8080
ファクス:049-228-7870

著者:若月美令

ライター
アイコン
好きなことは、行ったことのない場所に出かけること。作ったことのない料理を作ってみること。話したことのない人からさまざまな話を聞き出すこと。聴いたことのない音楽を聴くこと。そして、美術館・博物館で見たことのないものを見ること。初めて出会うものからインスピレーションをもらうことが元気の源のフリーライターです。

読んでくれた方の心に、ほんの少しでも何かひっかかるような記事を執筆していきたいと思っています。