【肉筆浮世絵―美の競艶】美人画に見る絵師の息遣いと時代の雰囲気|クロードクル

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2015年12月15日
【肉筆浮世絵―美の競艶】美人画に見る絵師の息遣いと時代の雰囲気

「肉筆浮世絵―美の競艶」に展示されるのは、米シカゴの日本美術収集家ロジャー・ウェストン氏のコレクションから厳選された約130点の美人画。貴重な肉筆浮世絵の魅力を紹介しつつ、その背後にあるものにも迫りたい。

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文化的な財産としての肉筆浮世絵

「それぞれの絵は自分の家族のようなものです」と語るのはアメリカ・シカゴの日本美術収集家ロジャー・ウェストン氏。上野の森美術館で開催中の「肉筆浮世絵―美の競艶」。11月19日の内覧会でウェストン氏が、「本日はご来場いただきありがとうございます。どうぞ楽しんでいってください」と挨拶した。

ロジャー・ウェストン氏 ロジャー・ウェストン氏

「肉筆浮世絵」は、絵師が絹や紙に筆で直接描いた、この世に一点しか存在しない作品。それ故、保存に失敗して消滅したり、散逸して行方不明になったりと、必ずしも後世に残るとは限らない。

しかし、ウェストン氏の熱心な収集のおかげで、多数の肉筆浮世絵が現代まで残っている。肉筆浮世絵は、日本が誇る芸術作品であり、日本文化を知るための貴重な資料でもある。そうした文化的な財産が「肉筆浮世絵―美の競艶」で展示されているのだ。

めくるめく肉筆浮世絵の世界を覗いてみよう。

肉筆浮世絵が伝える絵師の息遣いと時代の雰囲気

永田生慈氏 永田生慈氏

「肉筆浮世絵には、絵師の技量や息遣いまで鑑賞できる面白みがあります。この展覧会では、約130点の作品、約50人の絵師の作品を時系列的に観られるのが素晴らしい。また、肉筆浮世絵の最高品ばかり集めているのも素晴らしい。これだけの作品がどこにも散らずに揃っているというのが見どころです。最後に、ここに集まっている作品は、ウェストンさんが自分の審美眼、自分の好みで集めたものです。それも展覧会の大きな特徴となっています」

「肉筆浮世絵―美の競艶」を監修した美術史家・美術評論家の永田生慈氏は、ギャラリー・トークで熱弁を振るった。永田氏も絶賛する貴重な肉筆浮世絵の数々を少しだけ紹介したい。

《一休禅師地獄太夫図》に込められた河鍋暁斎の眼差し

「肉筆浮世絵には、絵師の技量や息遣いまで鑑賞できる面白味があります」という永田氏の言葉を聞いて、私が真っ先に思い浮かべるのは河鍋暁斎《一休禅師地獄太夫図》だ。

河鍋暁斎「一休禅師地獄太夫図」 絹本一幅 明治18~22年(1885~89)©WESTON COLLECTION 河鍋暁斎「一休禅師地獄太夫図」 絹本一幅 明治18~22年(1885~89)©WESTON COLLECTION

地獄太夫は、頓知咄(とんちばなし)で有名な一休禅師が教えを授けたとされる堺の遊女。彼女は自ら「地獄」を名乗り、地獄を描いた着物をまとっていたという。

《一休禅師地獄太夫図》では、地獄太夫の周囲で踊る一休禅師や骸骨と、着物柄となっている地獄絵が、生き生きとした筆致で描かれる。一本一本の線や鮮やかな色使いは、鑑賞者に強烈な視覚的インパクトを与える。

そこにあるのは、幕末から明治の動乱期を生きた暁斎の眼差しであろう。新政府軍と旧幕府軍が死闘を繰り広げた地獄のような日々。おびただしい犠牲の上に成り立つ「文明開化」の浮かれ気分。暁斎は、冷めた態度で時代の動きを眺め、自らの複雑な思いを《一休禅師地獄太夫図》に込めたのではないか。

《一休禅師地獄太夫図》の前で感嘆していたのは私だけではなかった。誰もが絵の前でじっと立ち止まったり、「骸骨や着物の柄がすごい」と声を漏らしたりしていた。肉筆浮世絵の醍醐味がそこにはあった。

《時世粧百姿図》と《夏の洗い髪美人図》に見る美人像

歌川豊国《時世粧百姿図》

官女や御殿女中から庶民や遊女までを描いた一連の作品群は歌川豊国《時世粧百姿図》。女性たちの化粧や髪型、着物の柄などは身分や立場などの違いを表している。緻密に描き込まれた絵のクオリティーもさることながら、江戸後期の風俗を知るための資料としても価値が高い。

《時世粧百姿図》に描かれるのは美人だけではない。いわゆる「不美人」も描かれていて、美人との対比で良い味を出している。当時どういう顔かたちが美人の基準だったのかがはっきり分かる。

時系列的に展示された美人画コレクションからは、日本人の美人観の変遷も読み取れる。中でも、渓斎英泉《夏の洗い髪美人図》が印象深い。

《夏の洗い髪美人図》

《夏の洗い髪美人図》からは、他の浮世絵とは異質な色香が漂ってくる。結われていない黒髪。着物の裾を掴む手。誰も見ていないと思っているのか、団扇を手にした猫背の女は虚空に視線を泳がせている。女のプライバシーを覗いているような背徳感すらもよおさせる作品だ。

何よりも着目すべきは、女の顔や足の大きさと細い体のアンバランスさ。現代のマンガやアニメのキャラクターにも通じるデフォルメされた美である。

幕末期に活躍した英泉は、当時の退廃的な世相を美人画にも反映させ、既存の美意識の転換を図ったのであろう。肉筆浮世絵から時代の雰囲気を感じ取ってみるのも面白い。

鑑賞者の目と心を楽しませる「肉筆浮世絵―美の競艶」

「肉筆浮世絵―美の競艶」に展示されている作品は、いずれもただ美しいだけではない。版画とは異なる一点物ならではの迫力が、鑑賞者の目と心を刺激するのだ。

浮世絵師が描いた江戸美人

肉筆浮世絵に絵師の思いを読み取るもよし、当時の社会的背景を考察するもよし、さまざまな楽しみ方がある。約130点の美人画(会期中、一部展示替えあり)を鑑賞しながら、審美眼を鍛えてみてはいかがだろうか。

展示会タイトル シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵―美の競艶 浮世絵師が描いた江戸美人100選
URL  http://weston.exhn.jp/
●会期:11月20日 (金) ~ 2016年1月17日 (日)
●会場:上野の森美術館本館1F・2F
住所 〒110-0007 東京都台東区上野公園 1-2
URL  http://www.ueno-mori.org/
●開館時間:午前10時~午後5時(金曜日は午後8時まで)
●休館日:毎週月曜日、2016年1月1日(1月11日は開館)
●アクセス:
JR 上野駅 公園口より徒歩3分
東京メトロ・京成電鉄 上野駅より徒歩5分

著者:みみずく

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平日の夜は、家庭教師として小学生から高校生まで幅広く指導しています。国語・数学・英語などの主要科目だけでなく、面接・作文・小論文なども教えます。各科目の勉強法や指導テクニック、受験に関するあれこれなど、教育に関する情報を家庭教師ブログに掲載しています。「両国 家庭教師」で検索してみてください。
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