【浮世絵から写真へ―視覚の文明開化―】伝統と新技術の接点を探る!|クロードクル

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2015年10月16日
【浮世絵から写真へ―視覚の文明開化―】伝統と新技術の接点を探る!

幕末から明治という動乱期に浮世絵と写真は出会いました。両者がからみあって産み落とされたユニークな作品の数々。伝統と新技術の接点に思いを馳せつつ、現代にもつながる日本の表現技法の可能性を考えてみます。

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幕末から明治の動乱期に浮世絵と写真は出会った

幕末から明治へ。旧勢力と新勢力が衝突し、日本文化と西欧文化が対峙し、善悪の価値観が一変した動乱期。その混沌の中で浮世絵と写真は出会いました。「日本の近代化」という特異な時代背景のもと、浮世絵と写真はどのような関係にあったのでしょうか?

この問題提起に対する一つの答を提示するのが、東京都墨田区・江戸東京博物館で2015年10月10日から開催中の特別展「浮世絵から写真へ―視覚の文明開化―」です。
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「プロローグ」「第1章 日本の絵と渡来した写真-二つの世界-」「第2章 絵と写真の出会い」「第3章 泥絵、ガラス絵、写真油絵-時代が生んだ不思議なモノ-」「エピローグ」から構成される本展では、浮世絵と写真、その他の表現技法を横断的に捉えたアプローチが特徴です。解説も章解説と節解説に分かれ、大きな視点で作品たちを理解する工夫が随所に見られます。

「プロローグ」では、江戸東京博物館が所蔵する江戸時代の屏風2点を展示。屏風に描かれた風景は、伝統的な絵画表現が写真へとつながっていくことを暗示します。
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浮世絵と写真がからみあう不思議な世界へ旅立ちましょう。

浮世絵と写真がからみあって産み落とされた不思議な作品たち

「浮世絵から写真へ―視覚の文明開化―」では、浮世絵と写真が同時に存在していた時代に生み出されたユニークな作品たちを様々な観点から楽しめます。

浮世絵と写真はお互いを意識していた

浮世絵と写真が出会い、お互いを意識し始めました。

浮世絵師・歌川芳藤は、「開化旧弊興廃くらべ」の中で錦絵と写真を擬人化し戦わせました。
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また、写真館の様子が錦絵として描かれるなど、カメラや写真が浮世絵のモチーフになることもありました。

江戸時代に生まれた “100人の美女” という美人画の発想は写真にも取り入れられました。写真師・小川一眞の手による「凌雲閣百美人」です。これらの写真は印刷・出版と結びつき世間に流布しました。

また、当時の写真術であるコロディオン湿板法は、失われていく文化財を記録するために利用されました。これによって、取り壊される前の江戸城の姿を現在でも確認することができます。西欧文明からもたらされた写真術が日本の伝統文化を後世に伝える役割を果たしたのです。

浮世絵と写真は相互にモチーフや発想を取り入れつつ、ともに行く末を模索していたのです。

さまざまな表現技法に表れた西洋画への憧れ

本展では、浮世絵と写真だけではなく、他の表現技法の作品も展示されています。これらの作品に表れているのは西洋画への憧れです。中でも特徴的なのは泥絵とガラス絵です。

泥絵は、安価な泥絵具で描かれた肉筆画です。西洋画風に低い水平線や線遠近法を意識した作品が多く見られます。また、ガラス絵は、ガラスの裏から彩色を施したものです。明治期には、写真を貼り付けたガラス絵も登場しています。
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忘れ去られた幻の技法―写真油絵

さまざまな表現技法が模索された時代、幻の技法が誕生しました。横山松三郎によって考案され、弟子の小豆澤亮一に受け継がれた「写真油絵」です。写真に油絵具で着色する技法は、まさに写真と油絵の融合。時代の申し子と言っても過言ではありません。

小豆澤亮一は写真油絵で専売特許を取得します。しかし、その5年後に小豆澤は亡くなってしまい、技法も忘れ去られてしまいます。小豆澤は、詳しいことが全く分からない作家と考えられていましたが、今回の調査でたくさんの作品が発見されました。それらの作品を鑑賞できる貴重な機会が本展です。

写真油絵が後世に継承されていれば、そこから新たな表現が生まれたかもしれません。そのような可能性に思いを馳せるのも楽しいのではないでしょうか。
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伝統と新技術の接点から見えてくる表現技法の可能性

「エピローグ」で展示されているのは相撲錦絵と横綱白鵬関の優勝額です。古の時代より連綿と受け継がれてきた相撲。力士の姿が描かれた相撲錦絵は、日本の伝統文化が浮世絵のモチーフとして人気があったことを物語っています。また、2013年までの横綱の優勝額は、モノクロ写真に油絵具で彩色したものでした。これは、幻の技法である写真油絵にも通じます。
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浮世絵と写真は、モチーフや発想を共有しつつ、それぞれの技法を取り入れたり競い合ったりしました。その過程で、泥絵やガラス絵、写真油絵など、ユニークな表現技法も注目されました。

幕末から明治にかけてのこうした動きは、現代のアートシーンにも共通するところがあります。インターネットの発達によって、現代日本では情報があふれ、新たな表現技法が日々誕生しています。情報化社会における現代アートの可能性を考えるために、「浮世絵から写真へ―視覚の文明開化―」を覗いてみてはいかがでしょうか。

「浮世絵から写真へ―視覚の文明開化―」は、浮世絵や写真に興味があれば必ず楽しめます。同時に、現代アートに関心のある方々にとっても、歴史から学べることは多いはずです。

浮世絵から写真へー視覚の文明開化ー
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/s-exhibition/#anc01
●会期:2015年10月10日(土)〜12月06日(日)
●会場:江戸東京博物館
130-0015 東京都墨田区横網1-4-1
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
●開館時間:9: 30~17 : 30(入場は閉館30分前まで)
土曜日は午後7時30分まで
●休館日:月曜(月曜日が祝日または振替休日の場合は翌日)
●入場料:一般 1,350円/大学生 1,080円/中・高校生 680円/小・中学生 680円
●アクセス:
R総武線・両国駅
都営地下鉄大江戸線・両国駅

著者:みみずく

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平日の夜は、家庭教師として小学生から高校生まで幅広く指導しています。国語・数学・英語などの主要科目だけでなく、面接・作文・小論文なども教えます。各科目の勉強法や指導テクニック、受験に関するあれこれなど、教育に関する情報を家庭教師ブログに掲載しています。「両国 家庭教師」で検索してみてください。
土日は、様々なイベントに参加するため、都内を中心に首都圏を動き回っています。アートやサブカル、妖怪、アングラ、フェチなど、偏った興味関心の赴くまま、好きなものを追い求めることに一生懸命です。名刺をばらまいたり、一眼レフで写真を撮りまくったりしているうちに、いつの間にかお友達が沢山できていました。イベントに関する情報も裏ブログ(下記サイトURL)やSNSで発信中です。
「好きな人や好きなものを応援したい!」という思いを大切に家庭教師&ライターとして奮闘中です。