浮世絵から読み解く横須賀&神奈川モダン~江戸後期から昭和へ|クロードクル

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2015年12月15日
浮世絵から読み解く横須賀&神奈川モダン~江戸後期から昭和へ

かつての活気ある港の風景が描かれた横須賀、景勝地として人気の高かった湘南エリア、そして急激に近代化されていく横浜。神奈川の歴史の魅力を再発見できる約250点の浮世絵を集めた企画展が黒船来航の地、横須賀の海を臨む横須賀美術館で開催されています。

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江戸時代の神奈川が描かれた見応えのある名所絵を展示

2015年11月14日(土)~12月23日(水・祝)まで、横須賀製鉄所(造船所)創設150周年記念事業「浮世絵にみるモダン横須賀&神奈川-斎藤コレクションから」が、横須賀美術館で開催されています。

美人画や役者たちの背景として今も変わらぬ江の島の姿が

浮世絵の中での名所絵の始まりは、美人画や役者たちの背景として描かれています。本展覧会も、こうした江の島や富士山を背景に、旅姿の人々や衣装をまとった役者たちの姿が主題となった動きのある作品の展示から始まります。

現在でも観光地として人気のある江の島は、浮世絵の中でも、早い時期から描かれていた題材のようです。江戸時代から人々に親しまれていたその姿は、今もさほど変わらぬ景色として眺めることができます。

当時のメディアとして貴重な資料となる浮世絵

写真はもちろんのこと、風景画もあまり一般的ではなかった江戸時代。当時の地形や景色を知る上で貴重なメディアとして、浮世絵で描かれた名所絵は重要な存在です。

本展覧会では、一般的には注目されることの少ない作品も、神奈川や横須賀ゆかりの浮世絵として積極的に展示されています。今回展示されている作品の中から、活気ある港町として栄えていた浦賀や、昭和の時代に埋め立てが行われたため、現在は全く違う地形となってしまった金沢八景の、当時の姿を垣間見ることができます。なかでも、広重や豊国の描いた金沢八景の名所絵は圧巻です。

初代歌川広重《山海見立相撲 浦賀》1858(安政5)年頃 斎藤コレクション 初代歌川広重《山海見立相撲 浦賀》1858(安政5)年頃 斎藤コレクション

二代歌川豊国《名所八景-金沢帰帆 従瀬戸橋野嶋之図》1833(天保4)年頃 斎藤コレクション 二代歌川豊国《名所八景-金沢帰帆 従瀬戸橋野嶋之図》1833(天保4)年頃 斎藤コレクション

江戸中期~浮世絵は旅を楽しむ人々の旅の手引き

初代歌川広重や三代目歌川豊国など、多くの絵師の題材となった東海道五十三次。今回は神奈川県ゆかりの宿場町を描いた名所絵40点以上が展示されています(神奈川には川崎から箱根まで9つの宿場町もありました)。

また、江の島と並んで浮世絵の題材として有名な富士山を描いた葛飾北斎の「冨嶽三十六景』も全46作品の内、約20点を見ることができます。旅が盛んとなった江戸中期、こうした浮世絵は、旅をする人、旅に憧れる人のガイドブックのような存在だったのかもしれません。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》1830(文政末頃)年頃 斎藤コレクション 葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》1830(文政末頃)年頃 斎藤コレクション

文明開化の活気があふれるモダンな横浜を感じる ~横浜絵

黒船来航以降、神奈川の風景は急激に、そして大きく変貌していきました。こうした新しい横浜の様子を人々にリアルタイムに伝え続けた浮世絵は横浜絵と呼ばれ、当時、たいへん人気がありました。

じっくり鑑賞したい展示ばかり

異国の人々や当時の横浜の様子が描かれた興味深い作品が数多く展示されています。中には細かすぎる位に町や人々が描かれている作品もあり、時間をかけて鑑賞したくなる魅力的な展示となっています。

この横浜絵に描かれている異国人の服装や行事などは、実際に見て描いたものだけでなく、外国の雑誌や想像で描かれたものもあるそうです。いずれにしても、当時の人々が突然現れたたくさんの異国人やそのふるまいなどに、いかに興味をかきたてられていたのかがうかがわれます。

歌川貞秀《五箇国人物行歩図》1861(文久元)年頃 斎藤コレクション 歌川貞秀《五箇国人物行歩図》1861(文久元)年頃 斎藤コレクション

歌川貞秀 上《横浜異人商館之図》下《横浜異人商館売場之図》1861(文久元)年頃 斎藤コレクション 歌川貞秀 上《横浜異人商館之図》下《横浜異人商館売場之図》1861(文久元)年頃 斎藤コレクション

浮世絵と神奈川の魅力を存分に堪能できる展覧会

順路の後半には、木版画ができるまでの説明をした展示もあり、江戸中期から始まった一色ずつ擦り重ねていく多色摺りの工程を知ることもできます。この多色摺りにより、文明開化の華やかな横浜の姿がいっそう魅力的な作品として描かれることができたと言えるでしょう。

今展覧会は神奈川の歴史と共に、当時の日本人だけでなく、ヨーロッパの芸術家たちをも魅了した色鮮やかな浮世絵の世界の魅力に触れることができます。ここでご紹介した作品以外にも、稀品で知られている北斎の「千絵の海」などの魅力的な作品が展示されています。現在の横須賀の地に建つ横須賀美術館を訪れて、浮世絵に描かれたかつての横須賀を感じてみてください。

※今回掲載した作品は前期展示(~12/6までとなっています。)後期の展示は12/8からとなります。

O横須賀美術館 浮世絵 下絵

須賀美術館 浮世絵製作に使われる道具

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横須賀製鉄所(造船所)創設150周年記念事業
浮世絵にみるモダン横須賀&神奈川-斎藤コレクションから
http://www.yokosuka-moa.jp/exhibit/
期間:2015年11月14日(土)~12月23日(水・祝)
休館日:12月7日(月)

横須賀美術館
<住所>
〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居4丁目1番地
Tel:046-845-1211

著者:m.takabayashi

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大学では美学美術史を専攻していました。以前は古代のギリシャやローマ美術、16世紀フランドル美術などが好きでしたが、最近は現代アートにも興味があります。現在は美術館や博物館、ギャラリーでのアルバイトやボランティアを通してアートに触れつつ、美術や旅行関係の紹介文を中心に書いています。趣味は、数年前に始めた写真。時間があると、湘南や横浜、東京などに撮影に出かけています。